季節で獲れる小田原の地魚
春
■アジ
「味がよい」ことから、「アジ」という名前がついた、ともいわれる。小田原にもっともなじみのある代表的な魚で、平成13年に「小田原市の魚」に制定された。ほぼ一年中獲れるが、春から初夏にかけてが、もっとも美味しく、漁獲が増えて値段もさがる。かつては、漁獲量第1位であるが、環境変動により資源が少ないため水揚げは減少している。たたき、刺身、酢じめ、フライ、南蛮漬けなど、どんな料理にしても美味しい魚である。
アジ(マアジ)の料理・レシピ・食べ方:焼く(塩焼き、さんが焼き、干物)、生食(なめろう、みそたたき、刺身、酢じめ、水なます、セビチェ)、揚げる(フライ、唐揚げ、南蛮漬け、エスカベッシュ)、煮る(煮つけ、塩いり)、汁(みそ汁)、炊き込みご飯(あじめし)
夏
■イサキ
産卵期の初夏が旬で、小~中型サイズが水揚げされる。甘みのある刺身はもちろん、独特の脂の香ばしさが印象に残る塩焼きや、煮付けもおすすめ。大型になると高級魚として扱われるが、小さくても美味しい魚である。
イサキの料理・レシピ・食べ方/焼く(塩焼き、干もの、白子焼き)、生食(刺身、みそたたき、焼霜造り、セビチェ)、揚げる(唐揚げ、皮の唐揚げ、白子のフライ)煮る(煮つけ、白子煮、真子煮つけ)、汁(潮汁)
■ゴマサバ
「サバ」といえば「秋サバ=秋が旬」といわれるが、これは「マサバ」の場合で、小田原でよく獲れる「ゴマサバ」は「夏」が旬である。体側中央から下にかけて胡麻状(丸い)の文様が散らばる。揚げる、煮る、焼くなど調理法を選ばない万能選手で、鮮度が良ければ締めサバもよし。値段がマサバより安めなのもウレシイ。
ゴマサバの料理・レシピ・食べ方:生食(刺身、セビッチェ、酢じめ、柑橘じめ、焼き切り)、汁(みそ汁、船場汁)、焼く(塩焼き、幽庵焼き、魚田)、煮つけ(みそ煮、しょう油仕立て、リエット)、揚げる(竜田揚げ、フライ)、塩焼き、ゆで干し(なまり)
■シイラ
ハワイでは「マヒマヒ」と呼ばれる白身のさっぱりとした魚である。フライやバター焼きで食べるのが一般的であるが、鮮度が良いものは刺身もおすすめ。身質は「ヒラマサ」に近いともいわれる。店頭でみかけたら、ぜひ一度味わってみて。
シイラの料理・レシピ・食べ方:生食(刺身、カルパッチョ、セビチェ)、ソテー(ステーキ、ムニエル、フライパン照り焼き)、揚げる(フィッシュ&チップス、フライ、唐揚げ)、煮る(煮つけ、ポシェ、真子煮つけ)、汁(みそ汁)、焼く(幽庵焼き、粕漬け、塩焼き)
秋
■カマス(ネイラカマス、ミズカマス)
今や小田原の夏から秋を代表する魚となったカマス。初夏に、ネイラカマス(アカカマス)の水揚げが始まり、太めで脂がのり、上品で香りよし!刺身、塩焼きやフライでどうぞ。ミズカマスはネイラカマスよりお値段安め、秋がシーズンで、フライや干物に向く。
アカカマスの料理・レシピ・食べ方:焼く(塩焼き、幽庵焼き、酒塩焼き、干物)、揚げる(フライ)、煮る(煮つけ)、生食(焼き霜造り、酢締め)、ソテー(オリーブオイル焼き、ムニエル)
■ワカシ~イナダ(ブリ)
その年の春に生まれたブリの子である。アジを一回り大きくした「ワカシ」サイズからはじまり、どんどん生長して、秋には1㎏程度の「イナダ」に育つ。黒潮沿いの相模湾ならではの味覚。塩焼き、バター焼き、から揚げ、型が良いものは刺身でも。「ブリ」は出世魚と呼ばれ、成長するにつれ呼び名が変わる。小田原では「モジャコ→ワカシ→イナダ→ワラサ→ブリ」と呼ばれる。
料理・レシピ・食べ方:生食(刺身、漬け、カルパッチョ、セビーチェ)、煮る(ぶり大根、煮つけ)、焼く(照り焼き、幽庵焼き、みそ漬け、塩焼き)、汁(吸い物、鍋、しゃぶしゃぶ、粕汁)、ソテー(フライパン照焼、ステーキ、ごま油焼き)
■スミヤキ(クロシビカマス)
カマスを真っ黒にし、大きくしたようなルックスの深海魚。見かけの怖さによらず上品な白身魚である。小田原以外ではほとんど流通しない魚なので、小田原人ならではの味覚といえる。脂がのっている。鮮度がよいものはナメロウで。塩焼きや煮つけも美味。つまようじのような小骨にご注意を。
料理・レシピ・食べ方:生食(なめろう、たたき)、煮る(煮つけ、まーす煮)、汁(潮汁、みそ汁)、揚げる(揚げボール、唐揚げ)、焼く(塩焼き、干もの)
冬
■ヒラメ
「寒ビラメ」という言葉があるように、ヒラメは寒い季節が旬で、脂ものって美味しい。刺身やムニエル、昆布締めなどがおすすめ。「栽培漁業」(人工種苗の放流事業)が行われていて、12月から4月頃にまとまって漁獲される。資源管理のため、35cm以下の小型魚は獲れても再放流され、夏から秋にはヒラメを獲る「刺し網漁法」は禁漁となっている。漁師さんが大事に育てている甲斐あって、小田原は関東で有数のヒラメの産地である。
ヒラメの料理法・レシピ・食べ方:生食(刺身、昆布締め、カルパッチョ、セビチェ)、煮る(煮つけ)、焼く(塩焼き、魚田、皮焼き)、揚げる(フライ、唐揚げ)、ソテー(ムニエル) 真子/煮つけ 内臓胃袋肝/ソテー(炒める)、煮る(煮つけ、塩ゆで)
■ブリ
「寒ブリ」といわれるように、寒い季節に脂がのって旬をむかえる。刺身や照り焼き、ムニエル。そして、小田原ならではの美味しい食べ方として、塩焼きに小田原産の柑橘を絞ってみては。
少し歴史のお話を。小田原は、昭和30年代までは、「寒ブリ」の大漁にわいた、ブリのまちだった。その後、「寒ブリ」はほとんど獲れなくなったが、ワカシやひとまわり生長したイナダが小田原の市場をにぎわせていた。ブリの資源は最近回復傾向にあって、ここ数年、ワラサ(60cm~)やブリ(80cm~)といった大型サイズのものが小田原の定置網にまとまって入るようになった。温暖化の影響か、昔の「寒ブリ」の時期からずれ込み、春先(3~4月頃)に定置網に入るようになったのである。
ブリの料理・レシピ・食べ方:生食(刺身、漬け、カルパッチョ、セビーチェ)、煮る(ぶり大根、煮つけ)、焼く(照り焼き、幽庵焼き、みそ漬け、塩焼き)、汁(吸い物、鍋、しゃぶしゃぶ、粕汁)、ソテー(フライパン照焼、ステーキ、ごま油焼き)
■イシダイ
「寒イシダイ」という言葉は・・・、たぶんないが、そういう言葉を使いたいほど、冬~春にかけて、イシダイは脂をたっぷり貯めておいしい。小田原は、全国でも有数のイシダイの産地で、定置網でまとまって漁獲される。身のしまった白身で、刺身はもちろん、加熱すると「キッチリ」とした強い歯ごたえで、煮付けや塩焼きもおすすめ。
イシダイの料理・レシピ・食べ方:生食(刺身、漬け、カルパッチョ、セビチェ)、ソテー(ムニエル、ポワレ)、焼く(塩焼き、素焼き、幽庵焼き)、煮る(魚すき、煮つけ)、汁(潮汁、みそ汁)
■アンコウ
深海魚で、ふだんは、水深500m程度の深海に棲む魚であり、2~3月頃をピークに産卵のため浅い所に移動してくるため、小田原の刺し網や定置網で獲れる。定番の鍋物や、カレーもおすすめ。
アンコウの料理・レシピ・食べ方:煮る(しょうゆ仕立て鍋、みそ仕立て鍋、煮つけ)、汁(みそ汁、すまし汁)、揚げる(唐揚げ、フライ)、ソテー(ソテー)
※写真・情報:市場魚貝類図鑑 https://www.zukan-bouz.com/