小田原の漁師Story

魚扱いに愛がある小田原。おいしい魚を多くの人に。 〜魚國商店 店長 矢嶋寛さん〜

魚國商店 店長 矢嶋寛さん

30歳で入社し、現在買い付けと売り場を取り仕切る。

 

 

 

 

 

ーFacebookやTwitterの魚國さんの情報、いつも楽しみにしているんです。

ありがとうございます。FacebookとTwitterはいま僕が書いてるんですよ。今日の市場の水揚げ情報と、今日の活魚のおすすめを毎日更新しているんですが、フォロワーも増えてきて、いろんなレスポンスがあります。深海の魚とかサメとかめずらしい魚を買い付けたら、それも載せるようにしています。サメなんかだと反応がすごく早くて。Twitter見て千葉あたりから買いにいらっしゃるお客さんもいます。問い合わせ自体はエジプトとかからもきますよ、英語じゃなくて読めなかったんですけど(笑)そういう反応ってSNSならでは。すごく面白いなあって思ってます。

もちろん、変わった魚以外でも、SNS見て買いに来たよ、って方は結構いらっしゃいますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーところで、矢嶋さんが被っていらっしゃるその帽子は?

 

これは小田原漁港の「買受人」の帽子です。セリに参加できる人はこの赤帽。黄色は「親方帽」で、小田原では値決めをする人たち。うちでは社長が被ってます。

僕は魚國の社長の親戚なんで、中高生の時から年末はずっと手伝いをしてたんですが、卒業後、仕事は別のことをしていました。結婚を機に30才の時に小田原に戻ってきて、魚國に入れてもらって、ですから魚屋になって今年で10年になりますね。今は買い付けと売り場全般のことを任せてもらっています。

 

ー魚屋さんの1日も朝が早いのですよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早いですよ。朝のセリが5時半ですから、5時前には市場に入るようにしています。買い付けが終わって7時半から8時くらいが唯一ちょっと休める時間。そのあと店に戻って、夜7時に閉店して7時半に片付け終わるまで1日フルで働きます。子供が小学生と年長さんなんで、帰ったら子供との時間を取って、休みは日曜日。そんな毎日です。

小田原って、多くの方がおっしゃってると思うんですが、魚種がすごく豊富なんです。それに漁港から網が近いんですよね。獲れてから市場までの距離がよその市場よりうんと近い。だからこそ、漁師さんたちは鮮度に対してすごくこだわってます。処理の技術も高い。この魚はこうやって締めて冷やさないでおけば夜まで身が生きているんだ、とかね。

おいしい魚を良い状態で、価値をわかって食べてもらいたいっていう思い。魚扱いに、愛があるんですよね。

僕ら魚屋はそのことをよくわかってますから。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーおいしく魚を食べてもらえるように、と考えていらっしゃるのですね。

 

大事な魚を扱うわけですから、店でもそのおいしさをちゃんと伝えたい。魚離れと言われている時代ですが、魚ファンになって、たくさん食べて欲しいですね。

うちでは魚は姿のまま売っているものも、焼くのか煮るのか聞いて、全部下ごしらえします。刺身の盛り合わせなんかも予算言ってもらえれば注文に合わせてつくりますし。理想は、なにも考えないで来てもおいしいものが手に入る、そんな店です。魚よろず相談引き受けます、って感じですね。それでもスーパーさんに比べたらまだまだ買いづらいのかもわかんないですけど。

あと3年くらい前からかな、昼過ぎから仕込みして揚げ物も揚げて店の角に並べてます。全部、生の素材しか使ってないからうまいですよ。

 

ーお客さんには観光の方も多いですか?

 

多いですよ。外国の人、特にヨーロッパのお客さんはこういう魚が並んでいるところってすごく好きみたいで、写真撮ったり大興奮ですね。買って帰れないんですけど、僕も近所のレストランシェフに言葉を習ってちょっと会話したり、旅先で楽しいじゃないですかそういうの。

日本の観光客の方なら、手ぶらで来ても保冷の箱とか全部用意してあるんで、活きたままの魚も持ち帰ってもらえますよ。ぜひ声かけて欲しいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー矢嶋さんの、魚や仕事に対してチャレンジする姿勢を見て、いろんな人が協力してくださるのではないでしょうか。

 

それはほんとにそう思います。チャレンジを後押ししてくれて市場にはとても感謝してますし、うちのスタッフもみんな同じ意識で仕事をして、提案について来てくれるから続けていけるんだと思ってます。魚の料理の提案に力を入れていこうってなったら料理が上手い子が家で作って、カフェのメニューみたいな写真を撮ってくれたり。店の入り口の黒板も、今はスタッフが書いてくれてます。

それから、まだ少数ではありますが、同業者や異業種に、同じ志や世界観で仕事をする同世代の仲間ができたのはすごく心強いですね。

 

ーこれから必要なことはどんなことだと思いますか?

 

 

 

 

 

 

 

 

いろいろありますけど、食育には力を入れていきたいと思ってます。最近、地元の小学校で見学に来てくれて、魚をおいしく食べるために魚屋でやっていること、なんていう話をさせてもらったんですが、今度は僕らが学校に行かせてもらえないか、と話しているところです。小田原の小学生には魚に詳しい子いっぱいるんです。釣りが好きな子とかめちゃくちゃ詳しいので、僕らが教わることもいっぱいあります。そういうのは全部吸収します(笑)。

魚の食べ方も、お客さんにたくさん教わりました。今度はそれをお客さんに提案したい、とか、やるべきことはまだ山のようにある、って思ってます。

 

海って、明日何が獲れるかってわからないんです。昨日獲れた魚が今日はいない。明日は違うものがすごくたくさんあがるかもしれない。今日と明日が違う中でいろいろ予測したり、工夫したり。魚屋の面白さにはそんな一面もありますね。

きつい仕事ではありますが、やりがいのある仕事だと思ってます。

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