ヒラメ漁、漁師の仕事はほんとうに面白い〜藤八丸 鈴木大助さん〜
藤八丸 鈴木大助さん
18歳から家業の刺し網漁を継いで20年。現在は刺し網のほか遊漁船も操業する。
ー港には、毎日何時くらいにいらっしゃるんですか?
4時くらいには毎日きますね。まず魚を出荷して、それから漁に出ます。
ーえっ、漁に出る前に出荷があるんですか?!
そうです。意外ですか?
僕がやってる刺し網漁は、獲ってきて生かしておく魚をメインに扱うんです。
前の日に獲った魚は、船の中か、海に浮かべた生簀(いけす)で生かしておきます。その魚を朝、市場のセリの時間に合わせて出荷して。出荷が終わったら5時半くらいから沖に出ます。
ー小田原の漁場は港から近い、と伺ったのですが、大助さんの網もそうでしょうか。
はい、近いですよ。一番近い網だと港から船で5分くらい、一番遠い網が30分くらいかな。刺し網は横に広く仕掛けます。今10箇所くらい入っているんですが、一個揚げたらまたすぐ仕掛け直して、次の網を揚げて、仕掛け直して。港に帰ってくるのが11時から12時前後、その間は休憩はナシで、飲むのは水だけですね。
ーどんな魚を獲っているのですか?
うちはヒラメです。
刺し網漁って定置網みたいに、いろんな魚種を狙う漁じゃないんです。刺し網には「目合い」っていう網目の大きさの種類があって、魚にあった目合いを使うので、狙う魚が決まっているんですよね。
12月から5月までがヒラメ網。ピークは1月2月。3月くらいまでは旬ですね。「寒ビラメ」って呼ばれる、大きくて身が厚い、美味いのがたくさん獲れます。その後、8月9月は伊勢海老ですね。春海老っていって、5月前後も一回やりますが、メインは8月ですね。
僕自身は5月以降は、刺し網漁から遊漁船(釣り船)にシフトして、釣りのお客さんを案内しています。
ー遊漁船もなさっているんですね。
大助さんは子どもの頃から漁師になろうと思っていらしたんですか?
いや、実はそうでもなかったんです。我が家は代々漁師で、僕で6代目かな。家業なので中学校の時からアルバイトで漁を手伝っていたんですが、高校の時は漁からすっかり離れちゃって。
高校を卒業したタイミングで親父に声をかけられて、それがきっかけですね、仕事として船に乗ったのは。
始めの何年かは親戚のおじさんと父と3人で船に乗っていたんですけど、ある程度仕事を覚えた頃に、お前一人でやってみろ、ってことで、自分一人の船に乗って、8箇所の網をひとりで担当してました。全体の1/3くらいですかね。
ーお一人で大変じゃなかったですか?
大変っていうより、漁師という仕事の面白さに気づいたのは、一人でやり始めてからでしたね。
たくさん獲れる方法とか、仕掛ける場所もこっちの方がいいかなとか、工夫したり。自分でやればやるだけ、考えれば考えるだけ結果に跳ね返ってくる。
だって、言われてやるんじゃつまらないじゃないですか。
どんな仕事でも同じじゃないかと僕は思います。今はほんと、漁師の仕事が面白いですよ。
遊漁船の方もいろいろ研究して、釣り好きのお客さんに楽しんでもらえるように工夫してます。
釣りの方は、夏のキハダマグロがおすすめです。三浦半島沖や初島沖まで船を走らせます。10月から12月のアオリイカなんかも楽しいんですよ。だからそれが伝わるように、ウェブサイトもわかりやすく、ワクワクする感じに最近リニューアルしました。
遊漁船って一回気に入ってくれるとリピーターになってくださる方が多いんです。だから一人ひとり、一回一回を大切に。やりがいがあります。
魚好きの方に遊びに来ていただく場所としても、小田原は魅力的な場所だと思いますよ。
ーところで、大助さんはどんな風にして小田原の魚を食べるのが好きですか?
ヒラメで一番好きなのは、オリーブオイルと塩で食べるカルパッチョ。あとはアクアパッツァ、洋風の煮込みですね。ヒラメ以外でも自分で獲った魚をいろいろ試してみてますが、どれもそれぞれ美味しい。それから伊勢海老の味噌汁も好きです。大漁の時は伊勢海老も多少安く出回ると思うんで、魚屋さんに並んでたらぜひ試してみてください。
さっき、前日獲った魚を翌日に出荷する、っていう話をしましたけど、魚って獲った当日が美味しいとは限らないんです。一番うまい状態で魚屋に並ぶ。小田原の魚屋には「獲れたて」とかって書いてないですけど、どれだって獲れたてで新鮮ですから。
いや、実は僕、醤油で食べる刺身が苦手なんです。酒も全く飲めない。漁師の風上にも置けない漁師なんです(笑)
ー最後に小田原の漁の魅力を教えてください。
一言で言うと、小田原の海はすごい海です。この地域は箱根山に守られて強い風が吹かない、魚種も豊富でたくさんいる。
毎日海に出てますから、もう海に出ないと落ち着かないんです。海の上はリラックスしますね。小田原には80歳以上の現役漁師さんもいらっしゃるんですよ。それだけ魅力のある仕事ということじゃないですかね。
僕もずっと続けていきたいと思います。息子もね、本人次第ですけど、漁師の仕事、継いで欲しいなと思ってます。